学会誌を出版する方法は?具体的な手続きや費用を解説

学会員の研究論文を出版したいと考えるものの、具体的な方法や、費用を抑える方法がわからない人もいるのではないでしょうか。学会誌の出版は出版社に委託せず、学会が直接出版するのがおすすめです。

出版社に委託すると出版に関する作業を一任できますが、出版権を渡さなければならず、印税以外の売り上げを取られたり、学会誌に掲載した論文の転載に制限がかかったりしてしまいます。

この記事では、学会誌を印刷して出版するまでの手順や費用を安くするためのコツ、印刷業者の選び方を紹介します。学会誌の出版費用を抑えたい人や出版権を委託会社に取られたくない人はぜひ参考にしてください。

学会誌を出版する2つの方法

学会誌を出版する方法は2つあります。1つ目は出版社へ委託する方法、もう1つは学会から直接出版する方法です。

ここからは、学会誌を出版する2つの方法のメリット・デメリットを見ていきましょう。

出版社へ委託する

出版社へ委託する方法を選択すると、出版にかかる費用や手間を一任できます。出版社は学会誌刊行の実績があり、出版のためのノウハウを既に持っているからです。

出版のための査読などの編集作業はもちろんのこと、必要な書籍コードの取得から学会誌の販売まで任せられます。

しかしメリットばかりではありません。学会は出版社に学会誌を一任する代わりに「出版権」を渡すことになるからです。

出版権を渡してしまうと、売り上げは著作権者に支払う印税以外、全て出版社のものになります。もし、学会誌の売り上げが好調で収益を得ても、学会には印税しか入りません。

また委託した学会誌に記載した論文を自由に転載できなくなるのもデメリットの1つです。

たとえば、委託した学会誌の論文を他の書籍に転載したい場合、著作権の許可だけでなく、出版社への許可も必要になります。さらに出版社との契約内容によっては、赤字になった場合その費用を負担しなければならないこともあるかもしれません。

出版社に委託するときは、契約内容の確認をしっかりと行わないと学会ばかりが損をする可能性があります。

学会から直接出版する

学会誌を出版するもう1つの方法は、学会から直接出版する方法です。学会から直接出版すると出版権は学会が持ちます。そのため、発行部数や出版後の論文の転載などを学会で自由にコントロール可能です。

出版後、学会誌が黒字になった場合の売り上げは、全て学会へいくことになるため、財政状況も潤うでしょう。財政状況が潤えば、学会の研究費用に回すことができ、世紀の大発見に繋がるものが見つかるかもしれません。

一方、学会誌を直接出版すると、出版にかかる費用や手間をすべて学会が請け負うことになります。学会誌の発行部数やボリュームによっては、出版に高額な費用がかかることもあるため、注意が必要です。

また、学会の研究者は研究に忙しいため、編集作業に時間がかかると刊行頻度が落ちてしまうというデメリットもあります。

しかしながら、出版にかかる作業を学会が全て請け負う必要はありません。学会誌の出版に必要な作業の一部は、「学会誌刊行センター」や印刷会社など外部に委託することも可能です。

学会誌を直接出版する手順

学会の規模や財政状況にもよりますが、学会誌を出版するならば、直接出版するのがよいでしょう。なぜなら、出版にかかる作業の一部は民間業者に委託できるからです。

また出版にかかる作業は慣れるまでは大変ですが、一度経験してしまえばあとは繰り返すだけなので、定期刊行も負担なくできるでしょう。ここからは、学会誌を直接出版する手順をご紹介します。

学会誌の原稿作成

まずは学会誌の原稿を作成します。この原稿の作成作業の全てを外部に委託するのは難しいでしょう。

40年の実績がある一般社団法人「学会誌刊行センター」では、学会誌の刊行をサポートしています。投稿原稿見本の作成から編集、電子版の作成まで学会誌刊行作業のノウハウを持っているため、不明点があるときは利用してみるとよいでしょう。

印刷会社の決定

学会誌の原稿を作成したら、学会誌を製本する印刷会社を選びます。

学会誌のコストを下げるため、安い印刷会社を選んでしまいがちですが、手間を減らしたいのであれば、サービス内容を確認しましょう。なぜなら、印刷会社によってサービスが大きく異なるからです。

印刷会社の中には、学会誌を専門に製本しているところもあり、編集や構成、査読を一任できます

流通の手続き

学会誌を書店で販売したり、国立国会図書館に納品したりするには、出版コードの取得が必要です。

出版に必要なコードとコード発行機関、有効期間を確認しておきましょう。

出版に必要なコードコードを発行する機関コードの有効期間
定期刊行物(雑誌)コード流通システム管理センター3年間
雑誌コード雑誌コード管理センター登録後翌月1日~3年間
ISBNコード
(世界共通で書籍を識別するコード)
日本図書コード管理センター3年間
ISSNコード
(雑誌を識別する図書コード)
ISSN日本センター期限なし

出版に必要なコードを取得しただけでは、学会誌を売ることはできません。

販売ルートを確保するには主に2つの方法があります。書店と直接契約する方法と出版取次会社と契約する方法です。

出版取次会社を利用すると、取次が既に契約をしている全国の加盟書店に学会誌が並びます。学会誌の認知度向上や販売数の増加が期待できますが、売り上げの一部を負担しなければならず、学会誌も一定数以上必要です。

書店と直接契約する場合も売り上げを一部支払う必要があります。ただ、契約数は限られるため発行に必要なコストを抑えることが可能です。

学会誌の出版にかかる費用項目

学会誌の出版にかかる費用は、発行部数やジャンル、ボリュームによって価格が大きく異なります。そのため、相場を想定するのは難しいのが現状です。

ここでは学会誌の出版にかかる費用項目とその内容を見てみましょう。

費用項目内容
原稿執筆執筆料学会外の専門家に寄稿を依頼する場合、必要となることがある。逆に学会員より論文掲載料を徴収することもある。
編集学会誌の査読やレイアウトを外部に委託する場合にかかる費用。
印刷・製本代学会誌の印刷や製本にかかる費用。部数によっては高額になることもある。
納品・配送代学会員へ学会誌を郵送するのにかかる費用。その他、書店と販売契約したときに必要な発送費用も含む。

上記以外にも出版には、出版コードの取得が必要です。出版コードの費用は一律なため、ここで確認しておきましょう。

出版に必要なコードコードを発行する機関費用
定期刊行物(雑誌)コード流通システム管理センター10,000円~(3年間有効)
雑誌コード雑誌コード管理センター2,858円
ISBNコード日本図書コード管理センター新規登録料 7,250 円+税
国際本部運営資金 750 円+税
ISSNコードISSN日本センター無料

学会誌を印刷する専門業者の選び方

学会誌の印刷だけならば、ネットプリントなど格安の印刷会社でも依頼できます。

しかしながら、学会誌に掲載されている論文の中にはグラフや表・図などが掲載されていることもあり、原稿そのままで印刷すると、論文が見辛くなってしまうこともあるでしょう。

学会誌を印刷する会社を選ぶときには、学会誌の実績があり編集作業も依頼できる専門業者がおすすめです。ここからは、学会誌の刊行をスムーズに進められる専門業者の選び方をご紹介します。

学会誌の印刷実績が豊富である

学会誌を出版したいのであれば、学会誌の印刷実績が豊富な業者を選びましょう。学会誌の印刷実績が豊富な会社であれば、誤字脱字はもちろんのこと、データや表現の不備を印刷前に見つけて指摘してもらえるからです。

学会誌の印刷は他の商業雑誌と異なり、デザイン性を重視していない代わりに内容の間違いに関しては非常にシビア。印刷後に間違いが見つかってしまうと、再印刷をすることも少なくありません

印刷のみの安い会社に依頼しても、何度も印刷すれば結果的にコストが上がってしまうでしょう。学会誌の印刷を専門にしている会社なら、査読や編集など学会員の負担を軽減し、再印刷を防止するサービスも用意されています

学会誌の査読や編集サービスがある

学会誌を出版したいのであれば、学会誌の査読や編集サービスがある業者を選びましょう。学会員は日々の研究で忙しいため、学会誌の編集に時間を割くことが難しいからです。

コストを抑えるために学会員が編集できたとしても、作業に時間がかかり刊行頻度が落ちてしまう恐れがあります。学会員の負担を減らし、読みやすく手に取ってもらえる学会誌を出版するためにも、学会誌を専門に査読や編集サービスを用意している印刷業者を選びましょう

学会誌の電子ジャーナル化に対応している

学会の財政状況と規模から製本する部数を最低限にして、電子化して世界に公開したいと考えている人もいるでしょう。

学会誌の電子ジャーナル化は進んでおり、多くの学会誌が電子化されJ-stage(科学技術振興機構)などに掲載されています。

印刷会社の中には、学会誌の電子ジャーナル化を委託できる業者もあり、電子化の作業や掲載のサポートも依頼可能です。

学会誌の印刷と製本なら福田印刷にご相談ください

学会誌の印刷と製本なら創業50年、実績10,000件以上の学会誌や学術誌の印刷実績のある福田印刷にお任せください。

福田印刷では、印刷から製本まで外部に委託することなく自社で行うため、学会員の要望に合わせた柔軟な対応が可能です。

また学会誌の印刷だけでなく、査読管理や編集代行のサービスも請け負っているので、学会誌作成の負担を軽減できます。J-Stageへの掲載サポートも行っているので、電子ジャーナル化を検討している学会様もご相談ください。

福田印刷のサイトでは、無料でオンライン概算見積を受け付けています。依頼を検討したいけど、費用が気になる方は以下リンクからオンライン概算見積を利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

学会誌は学会から直接出版できますが、手間や時間、コストもかかるため出版社に委託しようと考えることもあるでしょう。しかしながら、契約内容によっては、学会が不利な扱いを受けるため自分で直接出版するのがおすすめです。

直接出版するときには、まず印刷会社を選びましょう。印刷会社を選ぶ際には、費用の安さだけでなく学会誌の印刷実績や査読や編集などのサービスがある会社を選びます。学術誌は商業誌のようにデザインを重視するのではなく、内容が正しいかどうかを重要視するからです。

印刷後に間違いを見つけてしまった場合、修正後に再印刷をしなければなりません。再印刷を何度も繰り返すとかえってコストが上がるため、印刷前に編集や査読を依頼できる印刷会社を選びましょう。