学会誌や学術誌の印刷価格は?印刷の流れや会社選びのポイントを解説

学会誌を作成するにあたって、何から手をつけるべきかわからない人や、手間や費用を省く方法を知りたい人もいるのではないでしょうか。

印刷の仕組みと価格設定を知ることで、費用をかけるべき箇所が明確になります。たとえば少量の印刷のほうが単価が安くなる方法もあれば、ページ数が少ない冊子に向いている用紙や製本方式など、さまざまな印刷方法があるからです。

この記事では、学会誌や学術誌の価格が構成される要素や、冊子の価値を上げたり関係者の手間を省いたりする方法、印刷の流れについて紹介します。発行を予定している人は、ぜひ参考にしてください。

学会誌や学術誌の印刷価格が構成される要素

学会誌の印刷価格は、作業量や品質に左右されます。高額な用紙を使ったり、加工の手間がかかれば、印刷価格も高額になりがちです。

また、大量に注文するほど単価も安くなるのが一般的です。一方で、少量のオーダーの方が安価で済む印刷方法もあり、知っておくと役に立つかもしれません。

学会誌や学術誌の印刷価格が構成される要素について解説します。

編集代

学会誌や学術誌を作成する際には、原稿から書籍にするための編集作業が欠かせません。編集作業の難易度や量によって、価格も変動します。

たとえば、修正の必要がない原稿データを印刷会社へ渡すとしましょう。この場合は、印刷機向けのデータに変換するだけで刷ることできるため、編集代も安くなります。

しかし一般的には、書籍全体に統一感を与えるための編集作業が、専門家によって行われるケースが多いです。レイアウトを変更したり、引用文献の体裁を整えたりなど、編集工程が増えるほど手間賃も増加するでしょう。

用紙代

学会誌や学術誌を印刷する場合は、用紙代もかかります。用紙代は1ページ単位ではなく、まとまったページを1枚として計算する会社もあるため、事前に確認が必要です。

加工が施されていて見栄えがする用紙は、高価な傾向にあります。加工のない上質紙は安価ですが、厚みが増すほど値段も上がると認識しておいてください。

また、際立たせたい特徴によって、適している用紙も異なります。まずは表紙に向いている用紙からチェックしていきましょう。

表紙

表紙にフルカラーの写真やイラストを用いるか否かで、費用が異なります。フルカラー印刷をするなら、コート紙やマットコート紙など、発色が鮮明な用紙を選びましょう。

表紙の画質にこだわりがなければ、上質紙が割安です。模様が型押しされたレザック紙を表紙にすると、高級感が生まれますが割高になります。それぞれの用紙の特徴を、下記にまとめてみました。

上質紙・厚みの選択肢があり、カラーバリエーションも豊富
・表紙向きの用紙のなかでは安価な部類
コート紙・フルカラー印刷に最適の用紙で、写真やイラストを鮮やかに刷ることができる
・表面にコーティングが施されており、つややかでツルツルしている
・文字の書き込みには向かない
マットコート紙・コート紙と同様に、画像や色味を鮮やかに再現することができる
・コート紙よりもつやが抑えられているため、光の反射の影響を受けにくい
レザック紙・皮のような質感があり耐久性も高い
・表紙にイラストや写真を配置しなくても、格式ある雰囲気を出せる

中身

学会誌や学術誌の印刷代は、中身の紙の種類によっても変わります。厚手だったり加工されていたりする紙は割高になるように、用紙には価格差があるからです。

モノクロ印刷なら上質紙、カラー印刷部分を際立たせるならコート紙をおすすめします。中身部分の印刷に向いている用紙については、以下を参照してください。

上質紙・書籍の印刷では定番の用紙で、かつ安価な部類
・表面に加工がされていないので、文字の書き込みに向いている
・写真をカラー印刷すると不鮮明になりがち
コート紙
マットコート紙
・紙の表面がコーティング加工されている
・コート紙は光沢があり、マット紙は光沢が少なめ
・写真やイラストの表現力に優れている
書籍用紙・淡いクリーム色の用紙で、目にやさしく疲れにくい
・カラー印刷の発色は不鮮明になりがちで、文字の印刷に向いている

なお、中身用の紙を選ぶ際には、ページ数による制限があるため注意が必要です。ページ数が増えるほど書籍も厚くなるため、中身の用紙は薄めにするとよいでしょう。一方で、ページ数が少ない冊子は、薄い用紙を用いると本の仕上がりが貧相になりがちです。

印刷代

学会誌や学術誌の印刷をする際は、2種類の印刷方式から選ぶことになるでしょう。部数が少なければオンデマンド印刷が安く、部数が多いほどオフセット印刷が割安になると言われています。

ただし、印刷会社の料金設定によっては、総額に差がつきにくいようです。ここでは印刷方式の特徴を捉えて、実際の費用については印刷会社に確認してください。

モノクロ印刷とカラー印刷

一般的には、モノクロ印刷のほうがカラー印刷と比較して割安な傾向にあります。

学会誌は文字が多いため、わざわざカラーにしなくてもよいだろうと、モノクロ印刷を選択する人も多いです。しかし、モノクロ印刷に統一することで、図解や写真が見えにくくなる可能性があり、内容によってはカラー印刷のほうがよい場合もあります。

学会誌や学術誌のなかに図やグラフがある場合は、その箇所だけカラー印刷を使用する方法がおすすめです。一部だけをカラー印刷にすることで、印刷費用を抑えることができます。

オンデマンド印刷

オンデマンド印刷とは、デジタル印刷機によって印刷する方式です。印刷用のデータさえあれば刷ることができるため、オフセット印刷よりも短期間で仕上がります。モノクロページとカラーページの混在など、融通が効きやすい点がメリットです。

一方で、オンデマンド印刷は少ない部数を想定した印刷方式であるため、大量に印刷をするほどコストもかさんでしまいます。またカラー印刷の質は、これから紹介するオフセット印刷より劣る点も理解が必要です。

オフセット印刷

オフセット印刷とは、版を用いた印刷方式です。印刷前に製版の作業があるため、オンデマンド印刷より時間はかかりますが、その分仕上がりの精細さは優れています

オフセットは大部数や大量の印刷に向いている印刷方式です。したがって、少ない部数の印刷をすると、オンデマンドより単価が高額になることが懸念されます。

製本代

製本は、表紙の厚さや背表紙の有無などの方式によって、費用も変動します。工程が複雑で頑丈な仕上がりになる製本方式は、より高額になるでしょう。また、本の厚さごとに、適した綴じ方があります。

印刷会社によって対応できる製本方法は異なり、場合によっては定義に差があるかもしれません。ここでは並製本と上製本という2種類の方法について、概要を解説します。

並製本

並製本は、文庫本や雑誌に採用されており、やわらかい表紙の冊子になります。上製本と比較すると、表紙の制作工程が少ない分安価となっており、針金で綴じるとさらに安くすることが可能です。

並製本の代表的な綴じ方と、それらの特徴については、下記の表をご参照ください。

中綴じ・本文の用紙を二つに折り、中心を針金で留める方式
・大量でも短期間で仕上がり、安価な部類
・ページ数が多すぎると綴じられなくなる
・背表紙はない
平綴じ・本の背から5ミリほど内側を針金で留める方式
・ページ数が多くなっても、針金の種類を変えれば綴じることができる
・中綴じより納期が伸びる傾向にある
・背表紙をつけることができる
無線綴じ・本文部分を折り重ね、表紙でくるみ、背表紙に糊を付けて綴じる方式
・ページ数が少ないと選択できない
・中綴じよりは費用も納期もかかる
・背表紙は必然的に存在する

なお、無線綴じは、並製本だけでなく上製本でも見かけます。

上製本

上製本は、分厚く厚く折れない紙が表紙になっており、図鑑に採用されている方式です。並製本より耐久性が高いため、より長期の保存に適しています

上製本の代表的な綴じ方は、糸かがり綴じです。本文の用紙を糸で縫って綴じて、背表紙は糊付けをします。ページ数に制限がなく分厚い本でも製本できる反面、並製本よりも高額で納期も長くなるでしょう。

なお、ページ数が少なめの本を縫って綴じる場合は、ミシン綴じという選択肢もあります。

配送代

印刷が済んだ学会誌を発送するとして、1箇所のみに送る場合、送料は実費程度になるのが一般的です。複数の拠点に送るなら、送料だけでなく、梱包代もかさむことが予想されます。

発送先が増えるほど、封入作業もより手間がかかります。資料を同封したり宛名を記載したりするなら、さらに手間が増えることも予測できるでしょう。

細かい発送を自分で行えば費用が節約できますし、依頼をすれば手間から解放されます。

学会誌や学術誌の印刷で利用可能なオプションサービス

学会誌や学術誌の印刷を行う場合は、電子化やブックカバーの作成などのオプションサービスが利用可能です。オプションサービスを利用すると、学会誌の価値を上げたり、関係者の手間を省いたりすることができます。

当然ですが、オプション分の費用は増加します。どのようなサービスが存在するのかを知ることで、費用を節約するヒントにもなるのではないでしょうか。

それでは、学会誌や学術誌の印刷におすすめのオプションサービスをご紹介いたします。

電子化

作成した学会誌や学術紙をWEB上に公開すると、検索からのアクセスが期待できます。関係者以外が触れる機会も増加するはずです。

昨今は紙媒体だけでなく、電子ジャーナルで学会誌を発表する団体も増加しています。利用されるプラットフォームは、J-Stageや国立情報学研究所電子図書館事業(NII-ELS)が代表的です。

学術誌の電子化はもちろんのこと、プラットフォームへの登録を支援する業者もいます。これらの作業に苦手意識があるなら、相談してみてはいかがでしょう。

データの入稿形態

データの入稿形態は、さまざまな方法があります。

極端な例を挙げると、紙に手書きの原稿からでも、デジタル化して学会誌を作成することは可能です。ただし、デジタル化するための手間賃は高額になるでしょう。

ExcelやWordなどのデータで入稿すると、印刷会社によってはデータが崩れるかもしれません。それを修正するには、時間と労力分のコストがかかることが予想されます。

印刷会社が指定する方式で入稿することで、データを変換するための費用を削減できます。一般的にはPDFが推奨されているようですが、詳しくは印刷会社にて確認してください。

ブックカバーの作成や特殊加工

オプションサービスには、ブックカバーの作成や特殊加工もあります。刷り上がった印刷物に加工を重ねることで、質が向上し、オリジナリティを際立たせることも可能です。

箔押しという加工は、カラー印刷では表現しきれない箔の色と質感によって、高級感をかもしだせます。PP加工とは、アクリル樹脂やニスを紙に圧着させる技術で、見た目のよさだけでなく劣化を遅らせることもできるのです。

ただし、製本によっては対応が分かれるオプションもあるので、注意してください。

ブックカバーを作成すると、汚れ防止になり保存性も高まります。ただしブックカバーを付けられない製本方法もあり、その場合は表紙にPP加工をすることで、近い効果が期待できます。

オリジナルの封筒やチラシ作成

学会誌や学術誌の印刷だけでなく、封筒やチラシの作成も併せてオーダーできる業者もあります。ひとつの業者に任せることで、統一感が生まれ、発注の手間を省くこともできるでしょう。

論文の印刷や、ポスター、参加証や名札など、学会関連の印刷物があるなら、ついでに相談してみてはいかがですか。

学会誌・学術誌の印刷をする流れ

学会誌や学術誌を印刷する流れや注意点について、解説していきます。全体像を把握しておくことで、印刷会社とのやりとりもスムーズになるのではないでしょうか。

ここでは大まかな流れとポイントについて言及します。各作業の詳細が知りたい人は、記事の冒頭に戻って確認してください。

データ作成

手元の原稿を、印刷会社に渡すためのデータにします。冊子にすることを想定したデータ作成をしないと、のちに修正箇所が増えるでしょう。

まず、印刷会社がファイル形式を指定しているなら、それに従うと費用は安くなります。一般的にはPDFが望ましいようです。

また、綴じ方に応じたレイアウトを選択してください。無線綴じを採用したなら、表紙だけでなく背表紙のデータも必要になります。

余白も考慮すべきポイントです。たとえば文章が多いデータは、余白を仕上がりのサイズから上下左右に15mmずつ確保すると、読みやすい冊子になるでしょう。また、綴じる部分からの余白も作ることで、文字が読みにくくなることも避けられます。 

入稿

印刷会社は、入稿されたデータを印刷機に適したデータに変換していきます。

ここで気をつけないといけないのは、画像の画質です。パソコンのモニタでは問題なく見られたとしても、印刷物になると、ぼやけることが珍しくありません。これは解像度の低さが原因のため、350dpi以上の画像を使用するとよいでしょう。

入稿して仕様の擦り合わせが完了すると、いよいよ学会誌の印刷が開始されます。

出稿・校正

印刷物として刷り上がったものを見て、内容物や色味、画質などをチェックします。

提出した原稿と、仕上がってきた誌面を見比べて、間違いがないかを念入りに確認しましょう。なお、この校正の回数によっても価格が変動します。

納品

校正が完了すると製品が製造されます。製品が完成したら、納品するために梱包が行われるでしょう。この作業の量や納品先の数によって、納品までの日数や費用にも差が生まれます

学会誌や学術誌を依頼する会社の選び方

学会誌の印刷を依頼するなら、費用と質のどちらを優先するかの選択をして、目的に合う業者を選ぶことになるでしょう。

費用と目的以外にも、着目すべきポイントがあります。具体例を見ていきましょう。

納期が早いか確認する

まずは、依頼から納品まで、どれくらいの期間になるかを確認してください。オーダーが集中してしまうと、なかなか印刷機のスケジュールが空きません。

データの入稿から印刷、製本までを一貫して担う業者は、納期も早い傾向にあります。ただし、発注時期によっては時間がかかることもあるでしょう。

追加料金で納期を短縮できる可能性はあります。しかし高額になるため、余裕をもって発注することをおすすめしたいです。

学会誌に合うレイアウトとデザインがある

学会誌に適したレイアウトやデザインというものが存在します。これを考慮しないと、何の本かわかりにくくなってしまうため、注意が必要です。

商業誌と学会誌では、求められるデザインが異なります印刷会社のデザイン事例をチェックすると、その会社の志向を知ることができるでしょう。

会社実績が豊富である

学会誌や学術誌は、一般紙にはない仕様になることが予想されます。したがって、学会誌を作成した経験が豊富な業者の方が、よりスムーズに進行できるでしょう。

たとえば理系の学会誌は、数式や特殊な表記など、データを落とし込むだけでは済まない手間がかかります。抄録集とは何かを理解してもらえないと、印刷が進まない恐れもあるのです。

いくら印刷代や製本代が安く済んだとしても、打ち合わせの労力がかさんでしまうと、結果として割安感はなくなります。したがって、学会誌を作成した経験の有無は、見逃せないポイントといえるでしょう。

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まとめ

学会誌や学術誌の印刷価格は、業者の作業量や用紙の選択によって左右されます。

仕上がりを想定してレイアウトを作成し、推奨されているデータ形式で入稿すると、費用を抑えることができます。一方で、手書きの原稿であっても、編集費用を支払えば冊子にすることが可能です。

また、大量に印刷するならオフセット形式、少量の印刷ならオンデマンド形式が単価が安くなる傾向にあります。

できるかぎり節約して学会誌を作成するか、多少は料金が上がっても高級感のある冊子にするか、どれだけ手間を減らすかによって、さまざまな選択肢があります。

まずは、学会誌や学術誌の作成に長けている業者へ相談してはいかがでしょう。